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フェイキックIOLにおける、前房型IOL(Artiflex型、Artizan型)と後房型IOL(ICL)のご説明

●●●●様:
お返事遅れすいませんでした。
以下に@でお答えします。

▼送信内容
お名前 = ●●●●
年代1 = 30代前半
性別 = 男
ご住所 = 茨城県●●●●
メールアドレス =●●●●0@hotmail.com
ご相談内容

吉野先生
3/3にレーシック検査を受けました●●●●です。
診察の結果、レーシックは可能との数値でしたが、先生からはICLの検討を勧めていただきました。それからArtiflexに関する情報を集めながら、いろいろと考えていました。

私の視力はレーシック実施可能な数値の下限ギリギリのところでしたので、やはりリスクを考えるとICLの方が良いと考え、そちらをを前提で考えるようにしました。ちなみにですが、先の視察の際に先生はArtiflexを調べるよう仰られました。これは前房型のIOLですよね?
いただいた資料は後房型のICLとその費用、流れのものでしたが、私の場合ではどちらの方が適しているのでしょうか。

@おっしゃるようにArtiflexは前房型、ICLは後房型です。
前者、Artiflexの資料はお渡ししていませんでしたか?パンフレットではなく、コピー数枚の有水晶体眼内レンズの説明がそれにあたります。
ICLはカラーのパンフです。
両者とも一長一短があります。Artiflexは国内未承認です。ICLは厚労省の承認を得ています。だからといってArtiflexが劣るかというとそうではなく、Artiflexは米国とヨーロッパで承認を得ています.莫大な費用がかかる日本国内での臨床治験をArtiflexは行わなかったというだけのことです。したがって、Artiflexを挿入する場合は医師の裁量で個人輸入で行うことになります。

また、Artiflexは角膜に近いので、荒い手術や、レンズの虹彩への掴みが弱く動揺する場合等に、角膜内面に細胞が一層シート状に存在する角膜内皮細胞に障害を与える場合があります。この細胞が極端に障害を受けると角膜は混濁し、視力に影響が出る程の混濁の場合には角膜移植が必要になる場合もあります。
一方、ICLは、水晶体近くに存在するため、白内障が進行するケースが稀にあるという報告があります。この場合にはICLを取り出し通常の眼内レンズ挿入術を行うことになります(現在は白内障発症を防止する効果があるというhole ICLになっています)。
角膜移植術と眼内レンズ挿入術とではどちらが難易度が高いかと言えば前者です。したがって、本質ではありませんが日本承認レンズであること、白内障の対処の方が容易であることから、現在は、ICL(更にhole ICL)を選択する場合が多くなっています。

いろいろと考えている中で、ICLを考えた時、言い方は悪いですが急いで行うことも無いのかな、とも考えるようになりました。(視力の制限がレーシックに比べて広いことと、金銭的なところも含めて、です)
もう少し、じっくりと考えさせていただきたいと思います。
お忙しい中診察していただいたのに申し訳ありません。
よろしくお願いいたします。

@確かに急ぐ手術ではありませんのでじっくり考えてください。
ただ、強度近視の方は白内障になるのが早いということ、また、早い人では40歳を超えた頃から老眼(水晶体の弾力が無くなりものを見る距離の調節ができなくなること、白内障になる前に必ず老眼になります)が出てくることを考えたら、まだ老眼年齢ではない30台に手術を受けておいた方が手術の恩恵を享受する期間がより長くなると思います(遠くも近くも裸眼で見えるということ)。白内障になったら、眼内レンズを挿入することで近視は矯正できるわけですし、高度先進医療ですが、多焦点眼内レンズを挿入すれば老眼にも対処できます。
調節力がまだ残っており老眼年齢でない時期にフェイキックIOLを行えば、遠くも近くも裸眼で見ることが可能なわけですが、老眼年齢になってからフェイキックIOLを挿入すると、遠くは見えるようになっても近くは見えませんから老眼鏡が必要になりますので、その分恩恵は減少します。
以上、ご確認の程よろしくお願い致します。吉野拝

吉野先生
お忙しい中お返事いただきありがとうございます。
もう少しの間、じっくりと考えてみたいと思います。
取り急ぎ、御礼申し上げます。